図で理解する(個人)住民税

所得税との違い

個人の方の稼ぎ(所得)に対して、国からは「所得税」が、お住まいの市区町村からは「住民税」(個人住民税)が課税されます。
「所得税」は、サラリーマンの場合、毎月の給与支給額から概算の税額が天引きされ(源泉徴収 といいます)、年末に各種控除等を加味して正しい税額に修正されます(年末調整 といいます)。
(お勤めの会社が、源泉徴収と年末調整を行います)
一方、「住民税」は、前年の所得をもとに計算した金額を翌年に納税します。
このように「所得税」と「住民税」は納付のタイミングが1年ズレています。

特別徴収と普通徴収

給与所得者(サラリーマン)であれば、翌年6月の給与から毎月天引きされます(特別徴収 といいます)。
この場合、各市町村からお勤めの会社に税額が通知されます(特別徴収税額の決定通知書)。
なお、雇用主は従業員別の年間の給与の支払額等の情報を、各従業員の住む市町村に報告する義務があります。
(1~12月の情報を1月末までに給与支払報告書に記載して提出します)
各市町村では、この報告書の情報や本人が提出した所得税の確定申告の情報に基づいて特別徴収税額を算定します。

個人事業主など、特別徴収されていない人については、本人が翌年に納付します(普通徴収 といいます)。
この場合、各市町村から本人に直接郵送で税額が通知されます。
(年4回(6月末、8月末、10月末、1月末)に分けて納付します。)

特別徴収の対象

前年中に給与の支払いを受けており、かつ、当該年度初日(4月1日)において給与の支払を受けている者は特別徴収の対象となります(地方税法第321条の3第1項)。
したがって、アルバイトやパートであってもこの要件に当てはまる場合には、特別徴収の対象となります。
ただし、次の理由【普A~普F】に該当する場合は、普通徴収にすることができます。

 普A 事業所の総従業員数が2人以下
   (他の区市町村を含む事業所全体の受給者の人数で、以下の普B~普Fの理由に該当して普通徴収とする対象者を除いた従業員数)
 普B 他の事業所で特別徴収
 普C 給与が少なく税額が引けない。
 普D 給与の支払が不定期(例:給与の支払が毎月でない。)
 普E 事業専従者(個人事業主のみ対象)
 普F 退職者又は退職予定者(5月末日まで)
   (休職等により4月1日現在で給与の支払を受けていない方を含みます。)
出典:東京都主税局「特別徴収推進ステーション 特別徴収Q&A」

従業員が中途入社した場合の取扱い

(その従業員の前の勤め先から異動届出書の提出を受けた場合)

その従業員の前の勤め先から引き続き特別徴収の継続を行う旨を記載した「異動届出書」の提出を受けた場合には、この届出書を市区町村に提出することにより、引き続き特別徴収を継続することができます(地方税法第321条の4第5項)。
ただし、現実的には、同じグループ会社でもなければこの「異動届出書」を受け取ることは少ないのではないかと思います。

(その従業員から特別徴収への切替えを求められた場合)
上記の異動届出書の提出がない場合は、その従業員の納税方法は普通徴収に切り替わることとなります。
ここで、その従業員から特別徴収への切替えを希望する申出があった場合には、市区町村に「特別徴収切替届出書」を提出することにより、まだ納期限の到来していない分については、納税方法を特別徴収に切り替えることができます。

(上記以外の場合)
その従業員の前の勤め先から連絡がなく、本人からも希望がない場合には、その従業員の納税方法は普通徴収に切り替わります。その後、翌年5月に市区町村から「特別徴収税額の決定通知書」が届き、その翌月(6月)から特別徴収を行うこととなります。
実務的にはこの方法によることが多いのではないかと思います。

従業員が退職した場合の取扱い

(その従業員が転職先でも特別徴収の継続を望んでいる場合)
上記の「異動届出署」を作成し、転職先に送付することにより、引き続き特別徴収を継続することができます。


(上記以外の場合)
いずれの場合でも「異動届出書」を市区町村に提出します。

[1~4月に退職した場合
元の勤務先において、最後に支払われる給与や退職手当などから、残りの税額を一括して天引き(一括徴収)する必要があります(※)。
(※)元の勤務先から5月31日までに支払われる予定の給与・退職金等が残りの税額を超える場合に限ります(地方税法第321条の5第2項)。

[5月中に退職した場合]
通常通り特別徴収します(5月支給の給与から天引き)。

[6~12月に退職した場合]
本人の希望により一括徴収とするか、残額を普通徴収に切り替えることとなります。

届出書の記載内容等の詳細については、各市町村にお問い合わせください。

(参考)「こんなときはどうしたら(特別徴収義務者の変更・納税義務者の異動など)|豊島区公式ホームページ (toshima.lg.jp)

特別徴収税額の納期の特例に関する申請書

給与の支給人員が常時10人未満の場合は、各自治体に「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出することにより、年2回(※)の納付とすることができます(地方税法第321条の5の2) 

 なお、当該申請書の提出期限や書式は市区町村により異なります(東京都板橋区の場合「特例の適用を受けようとする月の20日頃まで」)

(※)6~11月徴収分  12/10 納期限
   125月徴収分  ⇒  6/10 納期限

図示

以上の内容を図示すると以下のようになります。(新たに従業員が入社する会社を「当社」として作成しております)

▼=×0年(一昨年)の稼ぎ(所得)に対する住民税(×1年6月~納付)
○=×1年(昨年)の稼ぎ(所得)に対する住民税(×2年6月~納付)
●=×2年(今年)の稼ぎ(所得)に対する住民税(×3年6月~納付)
△=×3年(来年)の稼ぎ(所得)に対する住民税(×4年6月~納付)

パターン① 前職なし、入社以前に所得なし(新卒入社等)

パターン②-1 前職なし 異動届出書提出なし 退職日が1/1~5/30

パターン②-2 前職あり 異動届出書提出なし 退職日が6/1~12/31

パターン③ 前職あり 異動届出書提出あり 

ざっくりまとめ

以上のように色々な制度があるのですが、会社目線でざっくりとまとめてしまうと、つぎのようになります。
・住民税とは、各従業員の毎年1月~12月の稼ぎ(所得)に対して課税されるもの。
・課税対象期間(1月~12月)の翌年に市町村から税額の通知があるので、6月の従業員本人の給与から天引きして、翌月10日までに各市町村に納付する。
・中途入社の従業員については、手続不要(前の勤め先から異動届出書の送付がある場合や従業員本人が直近の給与から天引きを望む場合は手続必要)
・従業員が退職した場合の残額は、最後の給与または退職金で天引き。6~12月退職なら本人の希望により普通徴収(本人が納付)とすることも。いずれにせよ手続必要。